館蔵黒船来航圖巻4種6巻の御紹介

　　　　　　　　　　　　　　　平成27年9月19日　　�駐c壽夫

（１）はじめに

今回は小生蒐集品の内より斯界未発表の、万延元年、遣米使節副使、村垣淡路守範正の従者、谷文一が筆した、黒船来航圖巻を中心に、横浜黒船館 館蔵の黒船来航圖巻、4 種6 巻を御紹介することしたい。小生が何故ペリー率いる黒船に興味を持ったかということにも、若干触れさせて貰うこととする。

（２）曾祖父��田好昌の海岸防備参加と横濱学研究

曾祖父��田好昌は，幕府の時の奏者番であった藩侯の募に応じ、海岸防備のため江戸赴任、横浜にも来訪。好昌は後に戊辰戦争の戦功で士分に取り立てられたが、この時は未だ侍奉公の身であり、一兵卒としての赴任であった。小生は昭和47年（1972）に横浜に移住したが、以来、曾祖父のこの横浜との繋がりから、自分の書斎に「横浜黒船館」と名付け、当時の瓦版・浮世絵など当時の原史料により、一般士民の側の観点から幕末から明治にかけての横浜の歴史を調べてきた。

（３） 桑島經徳書　亜墨利加艘　相州浦賀津渡来絵巻

（３−１）桑島經徳書　亜墨利加艘　相州浦賀津渡来　絵巻　巻一

（３−２）桑島經徳書　亜墨利加艘　相州浦賀津渡来　絵巻　巻二

（４）　異国船渡来記警備配置　圖巻（落款無し）

（５） 磯部図書　北亜墨利加蒸氣船　横濱入津絵巻

（５−１） 磯部図書　北亜墨利加蒸氣船　横濱入津絵巻　巻一

（５−２） 磯部図書　北亜墨利加蒸氣船　横濱入津絵巻　巻二

（６）谷文一筆　黒船来航絵巻

（６−１） 谷文一とは何者か

今回御紹介する館蔵　黒船来航圖　巻4種6巻の内で“谷文一　筆　黒船来航圖巻”のみが我が国の正史上に登場する人物“谷文一”の手になるもので残り３種5巻は、桑島經徳、無落款氏、磯部氏、と正史上には登場しない市井の好事家の手になるものであり、その意味で本“谷文一筆黒船来航圖巻”図巻は本紹介の冒頭に掲げられるべきものである。

◎　図巻の作者“谷文一”とは何者か? その１

フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』には谷文晁の娘婿の「谷文一」のみが紹介されている。この「谷文一」は、が幼名を文一郎といい、天明6年江戸薬研堀に生まれて、谷文晁に師事して花鳥画、人物画、山水画を学び、文晁の長女宣子を妻として養子入りして、後継者として嘱望されたが、文化14年（1817）32歳で夭折している。この図巻の識語の日付はペリー一行久里浜上陸の3ヶ月後嘉永6年9月（1853）であるから、この時点では谷文晁の娘婿の「谷文一」は既に没している。しからばこの図巻の作者「谷文一」とはなにものか?

◎　図巻の作者“谷文一”とは何者か? その2

“谷文一”は万延元年遣米使節副使村垣淡路守範正の従者の第8席の従者であり、使節団中の唯一の職業絵師であった。レイモンド服部著「万延元年遣米使節の記録ー７７人の侍アメリカへ行く」東京講談社1968 p331には、副使村垣淡路守の諸国より随従の従者の第4席に谷文一郎文一（画師文晁の孫）の名が見える。この「谷文一」は谷文晁の孫であったのである。

（参考文献）

レイモンド服部著「万延元年遣米使節の記録ー７７人の侍アメリカへ行く」東京講談社1968

（６−２） 谷文一　筆　黒船来航圖巻

（７） 結語

今回は斯界未発表の館蔵の4種6巻の図巻、すなわち、万延元年　遣米使節　副使　村垣淡路守範正の従者　谷文一　筆　黒船来航圖巻、および正史上には登場しない市井の好事家、桑島經徳、無落款氏、磯部氏の手になる図巻を御紹介した。諸賢の御参考となれば幸甚である。



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